日本酒造組合中央会 メディア資料室

Press Release

日本酒造組合中央会がラテン・アメリカ初の「日本酒マスタークラス」をASI・エクアドルソムリエ協会と共催で実施

日本酒造組合中央会では、2023年10月31日にエクアドルにて、ASI(Association de la Sommellerie Internationale―国際ソムリエ協会)及びエクアドルソムリエ協会と共催でレストランやホテルのソムリエを中心とした26ヶ国、46名の参加者に「日本酒マスタークラス」を実施しました。

 

 

日本酒造組合中央会(以下、中央会)では、2023年10月31日にエクアドルにて、ASI(Association de la Sommellerie Internationale―国際ソムリエ協会)及びエクアドルソムリエ協会と共催でレストランやホテルのソムリエを中心とした26ヶ国、46名の参加者に「日本酒マスタークラス」を実施しました。今回のマスタークラスは、ASIが主催するASI Bootcamp内のひとつのプログラムとして位置づけられており、中央会としては、初のラテン・アメリカでの実施となりました。ラテン・アメリカからは、開催国のエクアドルの3名を含む8カ国、25名の参加がありました。

ラテン・アメリカ地域は、日本酒の輸出金額全体に占める構成比が2022年時点で1%を下回っています。しかしながら、この地域への2013年から2022年の間の日本酒の輸出金額は、約3倍に増加しており、消費の拡大が続いております。今回マスタークラスを行ったエクアドルの首都キトには、ウイリアムリード社の主催するThe World’s Best50 Restaurants (世界のベストレストラン50)で紹介されたトップクラスの日本食レストランがあります。また、チリでは、Nikkeiという言葉で日本風の料理が親しみを込めて呼ばれて人気を博しており、日本食が浸透しつつあります。2021年にチリでは、カタドール・ワールド・ワイン・アワードのワイン部門内にSake部門が新設され、初年度は13社の蔵元がエントリーをしています。このように輸出金額ベースでは、依然として日本酒未開の地とも言えるラテン・アメリカ地域ですが、日本食及び日本酒の裾野は確実に拡大しています。

今回のエクアドルでのマスタークラスは、日本酒造組合中央会の北米のサポートデスク担当者であるマイケル・トレンブリー氏を講師として行われました。マスタークラスでは、日本酒の製造工程などに触れながらも、日本酒のフードペアリングの可能性について、Umami(旨み)の切り口から行われました。

Umamiの元になる物質はグルタミン酸などのアミノ酸です。日本酒は白ワインと比較してアミノ酸(特にグルタミン酸)を約5倍有しているので、Umami-rich(ウマミリッチ)な飲料であり、食事の風味を引き立たせる効果を持ちます。マイケル・ トレンブリー氏は、「このフード・ペアリングのポイントとして、日本酒の持つグルタミン酸とイノシン酸などを持つ食品とのペアリングは更に相乗効果が期待できる」と語りました。

また、トレンブリー氏は、日本酒が得意とする魚介類とのペアリングの科学的なメカニズムも明らかにしました。魚介類には、不飽和脂肪酸を含んでおり、鉄分や亜硫酸の含有が多いと“魚臭さ”を助長します。ワインは、一定の鉄分や亜硫酸を含んでいる為、魚介類とのペアリングは難しいとされていますが、日本酒は品質保持の観点から鉄分をほぼ含まない水で造られており、しかも亜硫酸を使用していないことから、この魚臭さを組成的に生まない構造になっており、これが日本酒と魚介類のペアリングの妙であると語りました。

更に日本酒には、世界のアルコール飲料の中でも珍しい“異なる温度帯で楽しむ”伝統があることもフードペアリングに絡めて紹介されました。日本酒は、5℃~55℃まで提供温度に幅があり、おおむね5℃ごとに独自の名称を持っています。例えば5℃は雪、10℃は花、30℃は日向といった詩的な表現で呼ばれ親しまれていることも紹介されました。このマスタークラスで協調された重要なポイントは、日本酒の提供温度を上げると甘味とUmamiは増して感じられるため、同じ日本酒でも提供温度帯を変えることでフード・ペアリングの可能性を大きく広げる特徴を持つことでした。

セミナーを終えたトレンブリー氏にセミナー参加者が最も関心を寄せたトピックについて尋ねると「参加者の多くは、日本酒が非常に万能で、さまざまな料理を引き立てることができるということに驚いたようで、特にソムリエたちは、さまざまな温度で日本酒を提供することによって日本酒の特徴を形作ることができるという側面に非常に興味を持ったようだ。また、ワインの世界ではUmamiの話はほとんど出てこないこともあり、料理と様々なアルコール飲料のペアリングを探求することに関して、新鮮な発見があったと思う」と語っていました。

セミナー参加者の一人で、コペンハーゲンのミシュラン二つ星のレストラン「アルケミスト」の担当者は、冒頭の日本酒の製造工程の説明が最も興味深かったと語っていました。

また、コロンビアのハイエンドレストランのひとつ、「ソフィテル レジェンド サンタクララ」のヘッドソムリエは、Umamiとペアリングの理論に関心を示し、もっと時間が欲しかったとセミナーの充実ぶりを語っていました。トレンブリー氏はラテン・アメリカ初の『日本酒マスタークラス』について、「世界中から新進気鋭のソムリエやベテランのソムリエが一堂に会し、日本酒の魅力に触れてもらえたことは最高に素晴らしい機会だった。彼らの日本酒への興味に火をつける絶好の機会となった」と締めくくりました。

ラテン・アメリカは、日本酒のみならず、アルコール消費全体に占めるワインの構成比が低い地域のひとつであり、この地域で最大の経済規模及びアルコールの消費量を誇るブラジルでもワインの構成比はわずか3%に過ぎません。マイケル・ トレンブリー氏も、日本酒が今後ラテン・アメリカで消費される為のチャレンジングな環境の一つに、他のアルコールとの競争をあげていました。今回のマスタークラスを通じて、多くのソムリエ達に、日本酒の持つ最大の特徴のひとつである「Umami-Richな特徴をもたらすペアリングの楽しみ方」や、「異なる温度帯で提供することで味わいが変わる面白さ」を伝えることができました。中央会としては、今後ラテン・アメリカにおいて、一人でも多くの消費者が日本酒の魅力に触れる機会を提供し、日本酒市場が拡大していくことを期待しています。


 

■日本酒造組合中央会について

全国約1,700社の酒類(日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん)メーカーが所属する日本酒業界最大の団体。酒類業界の安定と健全な発展を目的とし、1953年に設立。「國酒(こくしゅ)」とされる日本酒、本格焼酎・泡盛について情報発信することで、国内外へ幅広く認知向上させる活動に取り組んでいる。

https://www.japansake.or.jp/


■国際ソムリエ協会(Association de la Sommellerie International(ASI))について

1969年ランス(フランス)で設立された非営利団体で世界63カ国ソムリエ協会(及び5カ国ソムリエ協会のオブザーブメンバー)で構成される。各国のソムリエ協会の設立を促進しソムリエの技術や職位向上に取り組んでいる。

https://www.asi.info/about/ 


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